2005年06月01日

神奈川県が「グランド・セフト・オート3」を有害図書類に指定する件について

厳密には県の審議会がそういう答申を出した段階のようだが、通常はそのまま実施されるようだ。
 で、このグランド・セフト・オート3(以下、GTA3)、カプコンが出すと聞いたときの第一印象は「そこまで苦しいのかカプコン」だった。
 これは日本市場に入れてはならないゲームと思っていた。

当方がGTAの名を知ったのは1999年頃だと思う。

・マフィアの抗争を扱った米国産のPCゲーム。
・銃や車で無関係の住民や通行者を殺害可能。
・これに対し、ゲーム内で「残虐行為手当」という報酬が得られる。
・米国で大人気。

 想像できなかった。当方の理解と倫理観の許容範囲を超えていた。
 こういうのを日のあたる場所で発売しようと考える人間が存在する事、それ自体が衝撃だった。
 国内の濃いゲーム雑誌では、GTAは野蛮で血なまぐさいだけの「洋ゲー」の代表格として嘲笑の対象となり、
 SGGG(ゲーム開発が題材のゲーム※1)の中では志を無くした「悪のゲーム」として名前をもじって登場した。
 要するに国内では、高濃度のゲーマーがちょいと試し、あまりの非道さに辟易し、ネタとして語る為の存在だった。

その後、米国のティーンにはママが顔をしかめる事、それ自体に価値を見いだす傾向がある、とする記事を読んだ。

 推測するに、米国ではそれを前提に子供の倫理観を育む(あるいは叩き込む)システムががっちり機能しているのだろう(※2)。それが逆に彼地のティーンに極端な傾向を持たねばやっていけないほどの抑圧となっていて、GTAはそれを発散させる存在として、うまい具合に落ち着き先を見いだした、、、と考えている。でなければ彼地の厳格な年齢規制下で2,3とシリーズ化され、PS2にも進出、ゲーム内容も洗練されていった事の説明が付かない。

 子供と大人の線の引き方が違う。倫理や教育のあり方が違う。とはよく言われるが、こういう表れかたをするのだなと思った。

 例えば「子供をビデオシッターに預けて夫婦でお出かけ」が当たり前の社会では、それを可能にするだけの仕組みが整っている。単にシッターのなり手の有無ではなく、社会全体がそうした行為を「想定の範囲内」として心の準備ができている。そうした夫婦を想定していない社会で外形だけ取り入れて同じ行為をすれば、どこかで想定外の反応が返る。ある海外のゲーム関係者は「洋ゲー」の意味を知り、ひどく衝撃を受け、心を傷めたという話もある。もちろん、日本が遅れているのでも向こうが先進的な訳でもない。x86向けのソースをMacでビルドしたらコケた、ってのとあまり変わらない。

 なんかズレたが、そんな感じで、GTAは、日本に持ってくるのは大変だろうと思っていた。

 ここで冒頭の第一印象「そこまで苦しいのかカプコン」に戻る。
 いずれにせよ、発売前の記事からは、「その辺、きっちり日本向けにアレンジして見せます」って言葉はあったけど、匂いを嗅ぎ取れなかった。

 神奈川県の指定が妥当かどうかは分からない。なんとなくGTAじゃしょうがないよなと言う偏見はあるが、残念感が漂う。

 「あの」カプコンを持ってしても、日本向けに料理しきれなかったかという残念感。
 そしてその点、社内や雑誌社の鼻が効かなかったという残念感。
 業界の年齢/暴力表現規制が有効に機能しなかったという残念感。
 販売店の現場レベルでの不徹底とかも有るのかも知れない。
 無理解な人々がゲーム叩きの材料を得た事は確かだ。

 内には市場の冷え込み、幅を利かすゲーム脳、外には強大な挑戦者、厳しい時期が続く。

 でも、ゲームに関わる人々とゲーマーのみなさんは、挫けないで頂きたい。
 麦は踏まれて強くなるのだ。

 「はたしてゲームは天下万民の為になるか」

その問いに対して自分なりの確信を持ち、行動する者、その数が増えれば増えるほど、繁栄は近づく。
さ、なきだに、
無理解な人々が棺桶に入るまで、生き延びる事さえできれば、それだけでも勝利はあなた方の手に落ちるのだ。
必要なのは、その長い年月を、耐え抜く程の愛と勇気。
映画だってロックだって漫画だってアニメだって、いやさ能・狂言・歌舞伎・浮世絵にしたって、それに耐え、質の向上に邁進した先人達があるから今があるのだ。

 当方はゲームが好きだ。
 聞いた事もねぇような外国のガキから「楽しいゲームをありがとう」という手紙が来るようなヤツが。

などと、思った。

(※1):セガ,DC,2001。ゲームの目的は「面白いゲームを作ってセガを立て直す事」。ゲーム屋がゲームでゲーム屋自身を描いた、おそらく初の作品。最適化表現は「ゲーム版まんが道/蒲田行進曲」。黒く濃くシニカルな笑いと愛と勇気とプロ意識に満ちている。

(※2):例えばアメコミに課される非常に厳しい規制は、第二次大戦後、ティーン向けのデリケートな題材を扱い始めたコミックを受けて成立し、これを根絶した。日本史に例えれば、トキワ荘メンバーが廃業に追い込まれたようなものだろう。
posted by ばる at 01:49| Comment(0) | TrackBack(7) | ノイズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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