2006年04月18日

Appleと国際標準規格とx264

【概要】印象操作とパテント縛りとオープンソース
【タグ】[Apple-H.264][QuickTime Player][H.264/AVC][x264][パテント]

1. AppleとQuickTimeとH.264/AVC規格

--H.264についてもう一つ質問があるんですが、x264というH.264用のコーデックが存在します。

カサノヴァ氏: x264ですって?それはどこの製品ですか?

(Webブラウザで検索する)これですか?オープンソースですね。

(説明文を読む)ここに書いてありますね。x264は、H.264に入っている技術の一部を作り直して、特許の問題を回避したもの、とあります。こうした ものを、私たちが配布することはありません。

Appleにおける QuickTime、H.264とオープンスタンダード・オープンソース(PC WEB--2005/12/23)
Apple Computer インタラクティブ・メディア・グループ、プロダクト・マーケティングの、シニア・ディレクター
フランク・カサノヴァII氏に対する海上忍氏のインタビュー記事
競合を知らずに務まるマーケティング・ディレクターなどあるものか。これは印象操作だ(断定)。
知らないわりにこの人はサポートしないとその場で明言し、特許問題をほのめかしてもいる。
その場でググッただけで? 裏取りも技術検証も抜きで?  準備万端、見事なお手前(マジでお見事)。
この後で海上さんは(おそらくはHigh Profileの)x264.mp4を見せているが、此方もある意味カラダ張ってると思った。

Mac版QuickTime Player のH.264/AVC規格サポートがどこまでのものか、MainのサポートすらDoom9の言う通りへげへげ(後述)なのか、内部的な事はわからない。し かしMPEG LAのH.264/AVCライセンサーリストからこれは言える。

事実
彼らは動画エンコードの特許を一つも持っていない。彼らが 持っているのは.mp4コンテナの特許の、それも一部分だけだ。
推測
Appleが「国際動画標準規格」をフルサ ポートしても利益は出ない。むしろ特許料支払いの負荷がかかる。上策は、
コ ンテナの特許で相殺できるだけの最小限のコデックを用意し、国際標準規格を謳い、鈍足に抑え、買い替え需要喚起に繋げる事。
補足として、.m4v, .m4aといった拡張子はApple独自のもの。特に.m4vはMPEG4規格が定めるものと競合の可能性有り。基本的にやってる事はMSの wmv/wmaと大差ない。自分は、国際標準規格を謳ってるぶんだけむしろマイナスに不誠実な企業と評価している。

ハードでしか利益でてないら しいからそれが最善手だ。けど、それはオレの都合じゃ無い。
Apple-H.264の画質に文句はない。けど、カジュアル・エンコードでは時間と手間を喰い過ぎる。

2. x264はQuickTime Player7では作成も再生もできないH.264/AVC High Profileムービーを作成できる

Doom9コデックコンテスト2005を見つけたのは前述のインタビューが 掲載されたその日。
QuickTime は複雑な印象を残した。これは基本的には baseline profile コデックに b-frameを追加したもので、それ以上のものではない。速度は異常に遅く、ユーザビリティは率直に言って悪夢だ。何か一つは我慢しなければならないと しても、エンコーダがVfW や DirectShow inputを受け付けないからと言って、映画を丸ごと一本raw YUV formatでセーブしたい人はほとんどいないだろう。simple profile encoderが必要なら、他にもっと良い選択肢がある。QuickTimeについて書いている間、再生能力についても書く必要が生じた。というよりむし ろ、その欠落について。エンコード能力同様、その再生能力にも著しい制限がある。そう、Main Profileに対応はしているが、規格書のどこにも無い制限が10ほど追加されている。だから、QuickTimeで再生できないからと言ってお気に入 りのAVCコデックに文句を言う前に、再生ソフトを代えなさい。画質はどちらかと言えば低い部類に属し、ユーザビリティは我慢できる範囲を超えている。こ のコデックはメインラウンドに進めない。補足として、Appleは私のコデックコンテストへの協力依頼に対し、返答しないという選択をした。従って設定に ついて異論のある方はAppleに送って頂きたい。次回は返答があるかもしれない。
※ このコンテスト主催者の問い合わせに対して、Appleを除く全てのメーカー/オープンソースプロジェクトが推奨設定を返信している。MSを含む数社に至っては、指摘されたコデックのバグを修正したり、専用のコマンドラインエンコーダを用意し たりしている。Doom9氏は「Appleは逃げたと看做されても仕方が無い」とも言っている。
※優勝はx264、僅差でAteme。
※Atemeは映像関係の営利企業のようでNABにH.264/AVCエンコードチップを出展している。
※自分はApple-H.264の画質は極めて良いと思うので画質評価には異論がある(これはBond氏もDoom9掲示版で同様の事を言っている)。問 題はDoom9氏の言う通り の異常な遅さ(内部的に4〜5パス)と巨大な中間生成物(Win界に近いレベルのインタレ解除やデノイズを行う場合)だ。手許ではTVキャプチャしかしな いので、
Apple-H.264は間尺に合わない。

この評価が事実か否かは確証がないし、Doom9にはx264の非公式フォーラムがあるので中立性に疑問が残る。テスト内容もDoom9氏個人の主観的な ものだ(※本人もこれは目安に過ぎないし科学的な評価ではぜんぜん無いと書いている。一応、 他にロシアでAtemeとx264を同列首位としているサイトがあった。こちらは詳細な図表と数値だらけで、、、わけがわからない(泣))

だが重要なのはXvidと世界中のエンコードマニアを育てて来たDoom9の影響力だ。
この評価はWin界のアーリーアダプタを通じて早晩、国内にも波及するだろう(つうか、もうしてんだけど)。
コンテストの直後、Doom9のAVC情報は以下のように 書き変わった。

旧)DVD バックアップに最適なプロファイルとツールがどれかは現時点ではなんともいいがたいですが、(18th April 2005時点)
新)DVDバックアップでは、どうやらHigh プロファイルで以下のツールを使うのが最適なようです。(2nd January 2006時点)

※ この原文をまとめたBond氏のCPUはPentium III 800Mhz。ちょ い信じ難いが。

最近、国内のx264設定を紹介しているブログで、High プロファイルに見える例を数件見つけている。Win上のx264エンコーダは徐々にデフォルトでHigh プロファイルを吐き出す方向へ舵を切ったようにも見える。Apple-H.264の存在感はゼロロ兵長以下だ。いや、 キレイだと思うんだけどね?遅すぎなん すよ。設定で遊べねーし。
あれ?ドロロくんだっけ?ちょっと待って!今思い出すから!あぁ〜〜お願い待ってぇ〜!!

3. x264と特許とH.264/AVC規格

Appleの手足を縛る厄介な問題はx264をも縛る。
x264は、H.264に入っている技術の一部を作り直して、特許の問題を回避したもの、とあります。
事実
MPEG系列の規格はオープンスタンダードだが、要素技術 (というより数学的な考え方や「式」に近い)にはそれぞれパテントがある。
ソフトウェア利用ライセンスでも著作権(コピーライト)でもない。パテントは特許権だ。
規格ごとにパテントの管理方針はやや異なり、錯綜している。
少なくとも、H.264/AVCではISO-MPEGは自身ではパテント管理を行っておらず〜というより議論が紛糾して規格が空中分解する事を避けるため に深入りせず〜、結果的にパテント管理団体はMPEG LAの他にもある。
推測1
Xvidにはこのパテント抵触疑惑が根強くあった。自分の 理解では普及につれてどーでも良くなっていったもののようだ。
最近では、逆にXvidのGPLに抵触したエロゲメーカーが自主的にソースコードを公開するといった事例も起きている。
x264は同様の途を、より巧く辿るべく、開発レベルで慎重を期していると思われる。
例えば、H.264/AVCに規格上は存在する「後方フレームを参照するPフレーム」や「双予測Bフレーム」といった新しい機能はMEncoderのドキュメント類 には見当たらない。
CBRとABRの違いに木津千里(そこ絶望しない)こだわる彼らがこのへんに無神経とは思えない。
一方、「複数参照フレーム」はMPEG1で導入された「時間軸予測」の延長だからパテントが失効しているか、新たに成立しにくいのと考えられる。あくまで 推測。
推測2
もちろん、x264開発サイドがややこしい「双予測」より 手慣れた「双方向予測」を好んだに過ぎない可能性も高い。
しかし逆に、新規のパテントを迂回してもやりようはある事を示してもいる。
後方参照Pや双予測Bはパテントの失効を待って実装しようなんて肚ぢゃねぇのか。

オープンソース開発者達の心中を察するに、

おいらは趣味でコード書いてんだ、訴訟におびえてびくびく しながら遊ぶなんてやってられねーよ!
  1. そーだそーだ。コデックもコンテナも0からGPLでパテントフリーなの作っちまおうぜ!⇒ ogg/Snow/MKV/Nut
  2. 、、、だがそれがいい or 気にしないよヘーキヘーキ!⇒x264
てなとこなんだろう。

4. 手を止めなければそれでよろしい。

純正の動画環境に満足できない(linuxにはそもそも存在しない)ユーザー自身が、手を止めなかった事。
もしもMac OS XとWindows/linuxの動画環境に差があるとすれば、そこだと思う。

High Profileを手軽に作りたければいまやEsperance があるし、オプションを追い込みたければMEncoderなり、x264cliなりはMacでも手が出せる。

そんなわけで、そろそろQuickTime Playerとの互換性を捨ててみよっかなと思うのだった。マウスホイールのコマ送りは便利なんだけどねぇ。
posted by ばる at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | MPEG-4全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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